有機半導体の電荷移動シミュレーション

共有結合性有機構造体(COF)は有機分子で作られる多孔性材料で、 自己集合性、軽量性、耐熱性、ガス吸着性や貯蔵性など優れた特徴をもつ材料分子として注目されています。 また電気伝導性を持つCOFの合成例も多数あり、 その中には1cm^2 V^-1 s^-1を超えるキャリア移動度を示すものも報告されています。

我々は初めてp型半導体性を持つCOFとして報告されたTP-COFに注目し、 その電気伝導メカニズムを電荷移動のマルチスケール・マルチフィジクス・シミュレーションによって明らかにしました。 この研究では、有機半導体中のサイトエネルギーや電荷移動積分などの電荷移動パラメータを、 経験的な密度汎関数強束縛法(DFTB)法とフラグメント分子軌道(FMO)法を組み合わせることで、 効率的に計算する新手法の提案も行っています。

現在はこの手法を発展させ、ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層として使用される spiro-MeTADのアモルファス構造に適用する研究を進めています。

鬼頭 宏任         (きとう ひろたか)
鬼頭 宏任 (きとう ひろたか)
エネルギー物質学科 准教授

計算機シミュレーションから、太陽電池や光合成の光電エネルギー変換機構を量子力学的に理解することを研究の主要テーマにしています。